オーダーチーズ取材班は、フランス南西部のトゥールーズ、MOFブルゴン氏の熟成庫からほど近い、
『サン・フェリックス』の生産者さんをお尋ねしました。
ブルゴン氏みずからハンドルを握り、車に揺られて1時間弱。
辺りには自然豊かでのどかな風景が広がっています。
農場のオーナー、フリッカー夫妻の陽気で温かい歓迎を受け、
初対面の私たちもすぐに打ち解けることができました。
極上の農家製チーズを
MOF熟成士ブルゴン氏が昇華!
山羊と牛、良質なミルクの美味しさが
実感できます。
このチーズとの最初の出会いは、MOFチーズ熟成士 ブルゴン氏の熟成庫。
ブルゴン氏の気軽な一声から始まりました。
『サン・フェリックス』は、異なるミルクを層で重ねた、大変珍しいチーズです。
山羊と牛、「異なるミルクを混ぜて作るチーズ」は時折見られますが、
「重ねたチーズ」は、それまで、当店で紹介したことがありませんでした。
そしてさらに、モルビエを思わせる線も入っています。
恐る恐る試食させていただくと……
これは是非、日本の皆様にご紹介したい! と、ブルゴン氏にお伝えしたところ、
なんと、生産者さんの見学に連れて行っていただけることになったのです!
直接取材で伺ったお話も交えながら、このチーズを紹介してまいりましょう。
「サン・フェリックス」は、小さな牧場とチーズ工房を営むフリッカーご夫妻が作るチーズです。
企業の大工場と比較すれば、規模はかなり小さいのですが、品質には妥協していません。
昔ながらの手作り製法を守りながら、
洗練された新しいチーズを生み出す
スタッフ一同で上記の目標を掲げ、日々、動物の世話をし、チーズを作っています。
特に、ミルクの質には特別こだわっています。
農場の仕事はどれも人力で行うにはなかなか大変な作業ですが、より良い品質のために、
自然になるべく近い形でゆったりと動物たちを育てています。日々の搾乳後、
新鮮なミルクは農場内の工房に運ばれ、丁寧な手作業で、チーズに加工されていきます。
フリッカー氏とスタッフの皆さんは、牧草作りから牛の世話、チーズ作りまで、機械化せずにすべて手作業で行ない、
チーズ作りの伝統をしっかりと守っています。
また、一方で、新しいものを生み出そうと常に工夫を続け、他にはないオリジナルのチーズを世に送り出しています。
この『サン・フェリックス』は、見た目からしてかなり特徴的です。
まず、全体が“六角形”の、とてもユニークなシルエット。
丸、四角、筒、ピラミッド、馬蹄など多くのチーズを見てきたスタッフでもこれは初めて。
実はこの六角形まで「自家製」なのだそう。これは他の生産者もなかなかマネしにくい!
さらに、チーズの内側にも驚きポイントが!
カットすると、黒く美しく区切られた3つの層が現れます。
中央の白い層は、山羊乳チーズ。
上下のクリーム色が牛乳チーズでできています。
ラインが入ったチーズといえば「モルビエAOP」が有名ですが、『サン・フェリックス』でも、同様に、凝乳の境界に食用の木炭粉が振りかけられているため、黒いラインとなって現れるのです。
牛も山羊も飼う農場で凝乳も作り、新鮮な状態ですぐ使える環境だからこそできる、
異種ミルクの重ねチーズと言えるでしょう。ますます個性的ですね!
ブルゴン氏もお気に入りの『サン・フェリックス』。オススメの楽しみ方を教えてもらいました。
MOFブルゴン氏解説
このチーズならではの
お召し上がり方
まずは、山羊乳
中央に挟まれた白い山羊チーズの層だけを、
フォークで小さく取ってみます。
顔を近づければ、大草原を思わせる爽やかな香りが広がるでしょう。
この部分では、ヨーグルトのようなフレッシュな酸味、
山羊乳の旨味が濃厚に感じられ、ややほろほろとした食感も楽しめます。
次に、牛乳
外側、牛乳製チーズの層だけを取り、その香りを嗅いでみます。
山羊乳チーズよりも穏やかで優しい香りが感じられます。
こちらも単体で試食すると、牧場で飲む新鮮なミルクを思わせる、
濃厚な味わいが口いっぱいに広がります。
それぞれで食べ比べることで、同じ土地の同じ草で育っていても異なる、
乳種の違いをより深く感じていただけるでしょう。
そして、表皮も含めた三層を
一緒に味わう
まろやかな中にミルクの旨味とコクが混ざり合い、
多くの食材を使った豪華な1皿をいただいているかのようです。
異なるミルクの相乗効果で、複雑なニュアンスが増しています。
また、ときどきシャリッとした食感が感じられますが、
これは層と層を隔てている黒い「木炭粉」で、舌触りにアクセントを
加えてくれます。もちろん、まったく害のない食用の炭です。
どうぞご安心ください。
この通りに試食してみたところ、その味わいは本当に衝撃的!
“もう二度と忘れられない”と思ってしまったほどです。
まずは、それぞれの層で山羊と牛のミルクのフレッシュな美味しさを堪能。
そして、最後にすべてを舌に乗せれば、2種類のチーズがまろやかに混ざり合い、
先ほどとは全く違った美味しさが広がってくるのです。
まさに“ひとつで三度美味しいチーズ”です♪
一足お先に『サン・フェリックス』を試食した、当店スタッフの感想をご紹介します。
このチーズは、まず見た目から芸術品のようでワクワクします! 玉手箱を開ける気持ちでカットすると美しい断面が現れ、 山羊のミルクの真っ白な層が、牛ミルクのクリーム色に挟まれています。 常温に少し置いておくと表皮の下がとろけてきてますます美味しそう。
山羊の部分は白く、ヨーグルトのような爽やかな酸味と山羊乳の濃厚な旨味が感じられます。
ややホロホロとして、もったり、どっしりとした舌ざわりです。
山羊ミルクそのものの美味しさが伝わってきます!
淡いクリーム色の牛のミルクの層は、山羊の層よりまろやかな、ほんのり甘いミルクの風味が口いっぱいに広がります。 太陽をいっぱい浴びた牧草のイメージが浮かぶ、幸せな香りです。
3つの層をまとめて食べてみると、牛ミルクのまろやかさが山羊ミルクの酸味を包み込み、 2種のチーズの旨みの融合に驚きました。 とても複雑で完成度の高いチーズです!
いかがでしょうか?
オーダーチーズのスタッフが、このチーズのトリコになってしまった様子をお伝えできたでしょうか♪
『サン・フェリックス』がどれほど丁寧に作られているかお伝えすべく、
農場で伺った詳しいお話についてもお伝えいたしましょう。
ブルゴン氏と行く! チーズ工房探訪記
オーダーチーズ取材班は、フランス南西部のトゥールーズ、MOFブルゴン氏の熟成庫からほど近い、
『サン・フェリックス』の生産者さんをお尋ねしました。
ブルゴン氏みずからハンドルを握り、車に揺られて1時間弱。
辺りには自然豊かでのどかな風景が広がっています。
農場のオーナー、フリッカー夫妻の陽気で温かい歓迎を受け、
初対面の私たちもすぐに打ち解けることができました。
工房の中は、新鮮なミルクの香りが部屋いっぱいに漂っています。
あまりにも優しく心地よいため、ついつい深呼吸していたほど。
ご主人のアーンストさんが、『サン・フェリックス』や『クー・ド・コルヌ』の型とともに、
どうやってチーズを作っているのかを説明してくれました。
例えば、『サン・フェリックス』の場合。層ごとに別々に型詰めし、脱水。
ある程度固まってから改めて重ねるので、あのように綺麗なラインが出るのだそうです。
(取材日は『サン・フェリックス』を製造しない日だったため、残念ながら別のチーズの写真です)
その表情や言葉から、真っ直ぐひたむきにチーズ作りに向き合ってきた自負が感じられました。
さらに、絞りたての山羊ミルクも試飲しました。
山羊のチーズには独特のクセがあったりしますが、驚くべきことにこのミルクにはクセが全くなし!
とてもサラッとして飲みやすい口当たりと爽やかな香りからは、
「美味しい草を食べてるんだろうな」と感じられました。
工房を後にすると、搾乳を終えたお母さん山羊たちが、牧羊犬ならぬ「牧“山羊”犬」の
ヴィッキーに導かれ、放牧に出るところでした。100頭以上が連なる山羊の大移動は圧巻です!
飼育小屋の中は清潔で、人懐こい子山羊たちがたくさんお留守番をしていました。
近くでは、牛たちものんびりと食事をしています。
彼らの食事である牧草もすべて、自分たちで育てているとのこと。徹底してこだわっています。
サン・フェリックス村の牧場から、日本の皆様のお手元まで、
まるでリレーのバトンを地道につないでいくように、大切にチーズは届けられます。
小さなチーズに隠されたたくさんの人の情熱と努力を目の当たりにし、とても頭の下がる思いでした。
そして、「こんなに大切に作られているチーズは、なおのこと日本のお客様にご紹介したい!」と
想いを新たにしました。
こうしてチーズ作りに取り組むフリッカーご夫妻の良質なチーズだからこそ、
熟成させてさらに味わいを高める、ブルゴン氏の熟成技術が活きるのです。
フランス屈指の美食の町として知られるトゥールーズの地で、老舗チーズショップを構えるフランソワ・ブルゴン氏。歴代17人目となる「フランス国家最優秀職人(M.O.F)」のチーズ熟成士部門を受勲しています。
「世界一予約が難しいレストラン」と評された今は無きスペインの三ツ星レストラン「エルブリ」からも信頼を得ていたほか、毎年「リッツ・カールトン」で開催される“食とワインの祭典”にもフランスのチーズ熟成士代表として連続して選ばれ、世界トップレベルの美食家へ自慢のチーズを振る舞うなど、世界にその名を轟かせています。
また、地元であるトゥールーズの地への思いは強く、自分自身のことを“フランス南西部のご当地チーズの守護神”と称するほど、地元産のチーズへ強いこだわりを持っており、農家が手作りしたチーズを大切にし、後世に残していこうと精力的に活動しています。
農家が牧草を育て、牛や山羊の世話をし、搾ったミルクからチーズを作る。
それをチーズ熟成士が熟成庫に並べ、温度や湿度の管理に気を配り、知識と経験・感性を最大限活かして丁寧に熟成する。
そんな気が遠くなるようなすべての工程があってこそ、美味しいチーズが生まれます。
農場からの帰り道、MOFチーズ熟成士、ブルゴン氏からも改めてお話を伺いました。
郷土を愛し、地元のチーズを愛するブルゴン氏。
そのブルゴン氏が「間違いなく美味しいチーズを、日本のお客様がベストな状態で召し上がれるように」、
準備を整えてくださいます。
いつもチーズ熟成士のご紹介はしておりますが、「彼らが選んだ」、
「良質なチーズを作る農家」にスポットをあてる機会はなかなかありませんでした。
このチーズをきっかけとして、熟成チーズの奥深さをよりリアルに感じていただけたら幸いです。
先の、農場の写真でも見て取れた通り、フリッカーさんの農場には山羊と羊が飼育されています。
『サン・フェリックス』だけでなく、牛だけ、山羊だけのオリジナルチーズも作られています。
穴が特徴の『クー・ド・コルヌ』は、牛乳のみで作られたオリジナルチーズです。
濃厚なミルクの美味しさ、そして、『サン・フェリックス』と異なる個性をもっています。
さらに、リンク先のページでは、独特な命名の由来もご覧いただけます。
今回、同時販売となります。是非、一緒にお試しください。
農家の方々やチーズ熟成士をはじめ、たくさんの丁寧な
仕事を積み重ねた結晶と言える、素晴らしいチーズです。
四方@店長をはじめ、スタッフたちがみな感動し、
「これは日本のお客さまに一度体験していただきたい!」と
歓喜した逸品です。
是非、皆様にご体験いただきたいと思っています。
ご購入くださった折には、ご紹介している
「オススメの楽しみ方」もお忘れなく。
サン・フェリックス村からトゥールーズを経て、
日本までつながったチーズのバトン。
どうぞお受け取りください!
皆様のご注文お待ちしております。
…ミルクが…美味しい……!
“天に昇りそう”ってこんな味わいかも…?!