黒色の正体は?
山羊乳で作られたチーズのなかで、外観がまっ黒な色をしたチーズを見かけたことはありませんか?まっ黒チーズの代表格はフランスのロワール地方産「サント・モール」や「セル・シュール・シェル」「ヴァランセ」など。
白カビや青カビよろしく、「黒カビが付いてるの?」とか「黒カビって食べていいの?」などと疑問に思われる方も多いのですが、まっ黒の原因はカビではありません。実はこれは『木炭の粉』なのです。でも、なんのために木炭粉を付けているのでしょう?
最近はマイナスイオンブームで、炭がマイナスイオンを発生させるとか、殺菌や脱臭効果があるという話をよく聞きますから、木炭の粉といわれて「ピーン」と来る人もいるかもしれません。
木炭粉の働き
では、答えを知るために、ロワール地方のシェーブルチーズ造りを見てみましょう。まず、山羊乳に乳酸菌を加えて固めます。さらに酵素を入れて固め、型に入れて自然に脱水させます。形が整ったら、ポプラの木を燃やして作られた木炭粉と塩を混ぜたものをチーズの表面に付けて熟成させます。
自然脱水をさせたとはいえ、まだ水分をたっぷりと含んだフレッシュなチーズには雑菌がつきやすいもの。そこで役に立つのが木炭粉なのです。木炭粉は殺菌効果を発揮し、若いチーズを不必要な菌から守り、熟成に必要なカビ菌の繁殖を促します。こうして順調に熟成が進むと、最初はまっ黒だったチーズの表面にはうっすらと白いカビが生え、表面の色はだんだん灰色になっていきます。
シェーブルチーズは、フレッシュなものから熟成したものまで、いろんな段階のものを楽しめるチーズです。表面がまだまっ黒なフレッシュなものは酸味が強くて爽やかな味わい。ところが表面が灰色になってきたものは熟成が進んで酸味がまろやかになり、栗のようにほっくりとした食感とミルクの旨みがでて滋味豊かに変身します。
シェーブルチーズの熟成が順調に進むのは、まわりに付けられた黒い木炭粉のおかげ。もちろん木炭粉は食べても大丈夫ですのでご安心くださいね。