
山チーズの名品の1つに挙げられるのが、今回ご紹介する『アボンダンスA.O.P(A.O.C)』です。熟成期間は少なくとも90日かかる、セミハード・ハード系に分類されるチーズです。その味わいは、「山チーズ」、「熟成期間」、「セミハード・ハード系」、これらのキーワードからイメージできる通り、とっても“ナッティ”で、旨みが強く味わい深いチーズです。
この“ナッティ”さ、日本語訳では“ナッツ臭”といいますが、アボンダンスにはナッツ臭があります。ゴーダのような風味といえば分かりやすいかもしれません。
今回は、この機会にチーズの「官能評価」を中心にみてみましょうか。ワインのテイスティングも、色や透明度、香り、それから酸味や甘味や渋味といった味をチェックするように、チーズもチェックしてみましょう。ただただ「おいしい」と楽しむのももちろん良いのですが、毎回チーズの味を分析するとチーズの状態のよし悪しを感じる様になります。そして何より、おいしいチーズ談を存分に友人に伝えることもできます。
想像してみてください。グルメ番組で、おいしいってコメントしているだけの芸能人を。どういう味わいだからおいしいのか伝わってこないときってないですか。そう、言葉でおいしさを表現するって難しいんですよね。中には表情で伝わってくる人もいますが。
例えば、おいしいチーズに出会ったとき、そのおいしさを表現してみましょう。項目は、「外観と色調」、「組織とボディ」、「風味」、大きくこの3つにわかれます。外観や色調では、カビがきれいにはえているか、青カビはきれいなグリーンをしているか、オイルや水分が浮き出ていないか、切り口の色が変色していないかなど、少し専門的なチェックをします。そして組織とボディは、熟成具合や乾燥してボソボソパサパサしていないか、ミルキーななめらかさがあるかなど。そして風味は甘さや塩味や酸味や苦味や旨みなどをみます。シェーブルなら山羊らしさ、ブルーチーズならピリっとした辛さなどチーズの分類によっても項目は異なり、様々なチェックポイントがあります。
うーん、今回の『アボンダンスA.O.P(A.O.C)』であれば、オイル浮きはなくきれいなアイボリー色で、マイルドでナッティでフルーティな匂いがして、ただ少し辛味が強く、マイルドだけど円熟した旨みがある味わい。そして苦味がなくて状態がよいな。こんな感じでしょうか。
もちろん、あーおいしい!っていうのもそれだけで至福なのですが、その他にも、このワインに合うわとか、このパンには合わないとか、そういった楽しみ方ももちろんステキです。そして1人でチーズとワインを味わい、ゆったりとした時間を過ごせるのですが、いろいろな人とワイワイとチーズ談義などをしてたべるのも楽しいものです。中でもチーズを長年味わってきた年配の方のチーズ談やチーズ語録は奥深いですよ。
なお、この『アボンダンスA.O.P(A.O.C)』は、スイスにほどちかいサヴォア地方で作られるチーズです。そのため、夏のアルプスの牧場でたっぷり牧草(ラベンダーやハーブなど)を食べた乳で作ったチーズがこのチーズの旬な味わいになります。夏作ったものは3ヶ月ほど熟成してから店頭に出まわるので、特に冬に出まわるものがおいしいかもしれません。
A.O.P(A.O.C)取得年 | 1990年3月 |
種類別 | 半加熱圧搾タイプ |
産地/指定地域 | オート・サヴォア |
原料乳 | 牛乳(無殺菌乳) |
熟成期間 | 最低100日間 |
形と重量 | 直径約40㎝、高さ7~8㎝、重さ6~12kg |
固形分中乳脂肪 | 最低48% |