「シェーブルチーズは、熟成が進むと、『クロタン・ド・シャヴィニョル』のようにホックリするものと、『セル・シュル・シェール』のようにトロ トロになるものがあると思うのですが、あれは製造過程のどのようなことが関係してくるのでしょうか?」
こんなご質問をいただきました。
確かにそうですね。“ほっくり”と熟成していき、最後にはカチカチになっていくものもあれば、流れ出るほど“トロトロ”に熟成しているものもあります。不思議なものですよね。
ポイントは湿度
この両者の何が違うのかというと、ズバリ「熟成のときの湿度管理」です。
トロトロ熟成にしたいときには、あらかじめ湿度を高く設定します。95~100%で熟成させれば、チーズの水分が飛ばないので柔らか~く熟成していきます。カマンベールやエポワスなどのチーズも同じ。熟成すると柔らかくなるのは、湿度の高いところで熟成するからなのです。
では、ほっくり系のシェーブルはどうしているかというと、湿度70%のところで熟成させていきます。湿度70%と言えば、梅雨時の湿度より低いくらいですね。チーズはどんどん乾燥して、余分な水分が蒸発していきます。ほどよく熟成すると、ほっくりとした栗のような食感になるのです。さらに熟成させていくと、最終的にはカチカチシェーブルになるのです。
熟成士の腕の見せ所でもあります
ですから、熟成方法を変えれば、同じ『クロタン』でも、“ほっくりクロタン”と“トロトロクロタン”の両方を作ることができるのです。一般的にクロタンはほっくりさせるのがおいしいとされていますが、フランスでも、一部の熟成士さんはトロトロ熟成をしていたりするんですよ。
シェーブルチーズの“ほっくり”と“トロトロ”の違いは、熟成のときの湿度が味の決め手になっていることがお分かりいただけたでしょうか?