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カタルーニャの主婦から二つ星シェフへ |
スペインはサン・ポル・デ・マル(カタルーニャ地方)の主婦だったカルメ・ルスカイェーダ氏が、自宅の目の前の1800年代に建てられた建物を買い取りレストラン【サン・パウ】をオープンしたのが1988年。1991年にはあっという間にミシュランの一つ星を獲得。1996年には二つ星をとるという躍進ぶり。それも名のあるレストランで修行したわけではなく、お母さんから教えてもらった地中海の海の幸、山の幸を使ったカタルーニャの伝統的な料理を元にアレンジしていったというのだから、その才能に驚かされる。
コレド日本橋ANNEXの【サン・パウ】はそのルスカイェーダ氏にほれ込んだ経営母体の社長が、建物の詳細な模型まで作って持っていくという熱の入れようでなんとか口説き落とし、2004年4月の開店にこぎ着けたのだという。
写真は来日していたカルメ・ルスカイェーダ氏と、今回お話をしていただいたメートルの工藤年男氏。
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ランチコースとディナーコース |
【サン・パウ】にはランチタイムとディナータイムがあり、21000円のディナーコースは6種類のアミューズ、その後に3種類の前菜、魚料理、肉料理、チーズプレート、デザートと続く。この12皿を3時間かけていただくというのが【サン・パウ】の基本である。
8000円のランチコースは、日本橋という場所柄、時間のないビジネスマンが多いということから作られたショートコース。時間はあるがさすがに昼間からディナーの12皿は多いという人のために15000円のランチコースもある。もちろんディナーコースをお昼からでもオーダーすることもできる。
ア・ラ・カルトからいくつかピックアップしてみよう。
カタルーニャ地方では、豚は残すところなく全ての部位を料理に使うらしいが、写真にある“イベリコ豚のモザイク仕立て”では、ぶつ切りにした豚の顔の部位(スネ肉と血液のはいった腸詰めも)を三角形のテリーヌの型にはめ、パートフィーロで巻いてオーブンで焼いたもの。
下の“ボタン海老”はクレーマ、リヘーラ、フリトス・チップスという3つのテクスチャーのアーティチョークとボタン海老で作られている。
このほかにも日本で飲んだ梅こぶ茶を「美味しいスープ」だと感じたルスカイェーダ氏が、梅こぶ茶の柔らかいゼリーを敷いて作り上げた“車海老のマリネ”といった、ひらめきに満ちた一皿などもある。
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5種類のチーズと付け合わせの絶妙なるコンビネーション |
塩からいものに果物など甘いものを合わせるというところにカタルーニャ地方の料理の特長があるというが、【サン・パウ】のチーズプレートはまさにその組み合わせによって生みだされている。
それまではフランス料理店によくあるようなワゴンに乗せて運ばれてきたチーズを選ぶスタイルだったのを、2000年からチーズを5種類に分類し、それぞれに付け合わせ(ガルニシオン)を組みあわせた独特なチーズプレートに変えたのだそうだ。
このチーズプレートは季節ごとにチーズも付け合わせの組み合わせも変わり、毎回そのマッチングの妙が大好評だとか。(チーズプレートのみは2800円)
ちなみに写真にある夏のチーズプレートは、手前からコルシカ(白カビの加工乳)+焼メロン/カナリア諸島のコルテーザ・ピメトン(山羊乳のプレスした加工乳)+ヤシの木の蜜のエスプーマ/ラスケラ(山羊・羊・牛混合の加工乳でない生のもの)+ティント・デ・ベラーノ/マンステール(ウォッシュ)+コンディフォールと西瓜のコンフィ/ラ・ベラル(青カビ)+レーズンとポルトを挟んだガレータが組みあわせてある。
全てがスペインのものというわけではなく、フランスやイタリア、スイスのチーズなども使われている。日本では手に入らない壜内二次発酵したチーズという指定があった時には、わざわざ空輸したという。この時はさすがに匂いのきついものだったため、残されるお客さまも出たとか。
チーズとくればワインだが、チーズとガルニシオンの絶妙の組みあわせごとにワインを選ぶとなると、5本のワインが必要となる。そのため、【サン・パウ】ではガス入りの発泡水を勧めているという。水で口を洗って、また新たなチーズとの組み合わせを楽しんでもらいたいという意図だ。
“ビッチーカタラン”という発泡水がお薦めらしいが、少し塩分を含んでいるからなのか検疫を通らないのだそうだ。そのため【サン・パウ】では“サンタニオル”という発泡水が使われている。
もちろんワインセラーには、その90%がスペインのものだという500種類のワインも揃えてあり、日本ではここでしか飲めない貴重なワインもあるという。【サン・パウ】にはシガーも楽しめるワインバルも併設されている。
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スペインと日本の【サン・パウ】は同じ時間を刻んでいる |
サン・ポル・デ・マルと東京の【サン・パウ】は同じ時間を刻まなければ意味がないというコンセプトがルスカイェーダ氏にはあり、スペインで新たなメニューが生まれると、三日後にはレシピを覚えたスーシェフが来日し、日本での素材選びがはじまるという。
サン・ポル・デ・マルで使っているスズキに近いものとして日本中のスズキから長崎のヒラスズキを選び出したり、日本にはいないメルルーサという魚の料理には、福岡の甘鯛を代用したりと、その苦労は絶えないようだ。
しかも、どうしても日本では作れないメニューは、違うレシピにし、それに合わせてスペインの【サン・パウ】のメニューも変えるという徹底ぶりだ。
このこだわりを考えると、これから支店が増える可能性は低そうだ。食材の思い掛けない出会いを創造する天才女性シェフの味を、日本で味わえる幸福を享受しに出かけてみてはいかがだろう。 |