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トップ > フランス熟成士のスペシャリテチーズ > ロドルフ・ムニエ > ロドルフ・ムニエ氏の工房探訪記

四方店長が行く!「ロドルフ・ムニエ氏の工房探訪記」

“熟成士”が完璧に熟成したチーズが食べたい!
四方@店長です。

2002年5月にオーダーチーズを開店してから、はや9年。昨年はチーズスクールも開校し、本当に常にチーズのことだけを考えて過ごしてきました。

飲みに行くのが好きな私は、よく都内のワインバーに出没しているのですが、カウンターで飲んでいる時に、隣でチーズを注文している方がいらっしゃったりすると、さりげなく「いつもはどこで買っているのですか?」なんて聞いてみたりしてます(笑)。たま〜に当店のお客さんに出会えたりすることもあって、密かな喜びを感じることもあるんですよね。

今年の春先のことなのですが、あるお客さまとの衝撃的な出会いがあったのです。
「チーズは大好きで、オーダーチーズでよく買い物してます。でも、最近はちょっとチーズにも飽きちゃって…。以前、フランスで食べたような“熟成士”が完璧に熟成したチーズが食べたいよなぁ…。あ〜、日本じゃ、あんなチーズは味わえないのかなぁ。あのトロリとした食感、忘れられないなぁ…

聞けば、フランスに3年ほど留学し、その間、毎日のようにチーズを食べていたんだそうです。それにしても、チーズ熟成士が手がけたチーズを毎日のように食べていたなんて、ホントに贅沢な体験をなさってますね。

そのおいしさが忘れられなくて、当店のチーズを何度もご購入いただいては、敢えてしばらく食べないで熟成を進めてみたり、自分で色々と研究してみたそうなのですが、やはりどうしても上手くいかないのだとか。

この「チーズは熟成を進めると旨味を増す」ということは、すでに皆さんご存知のことだと思います。

最近、日本では「賞味期限改ざん」の問題が大きくクローズアップされているので、私も大きな声では言いにくいのですが、特にナチュラルチーズに関しては、賞味期限が近くなった方が、より熟成が進んでおいしくなる傾向にあることは間違いありません。このあたりの加減は難しいのですが、最適な熟成ポイントを探すのもナチュラルチーズの楽しみ方の一つですね。

当店でも人気の『モンドール』などは、特にその傾向が強くて、しばらく野菜室などに放置しておくだけで熟成が進みます。賞味期限が近くなった頃には、白いカビが変色するとともに、チーズの内部は完熟状態! さらにトロトロ具合が増していくんですよね。

ただし、やはり「熟成」の見極め方とか、その仕組みに対する理解が進まないと、日本ではなかなか受け入れられないようです。日本人のほとんどは「食べ物は新鮮なものほどおいしい」と信じ込んでいらっしゃいますから。

そんな現状にちょっとだけ疑問を感じていた私には、そのお客さまの声が頭に焼き付いていました。「熟成にこだわったチーズが食べたい…。熟成士のチーズが食べたい…」

当店をご利用いただいているお客さまの数もかなり増えてきています。チーズを食べ慣れた方も沢山いらっしゃいます。以前から「そんな皆さまに、さらに一歩進んだ上級なチーズを召し上がっていただきたい」と考えていたのですが、その思いはますます強くなりました。

そこで、世界最高の熟成チーズを探すために、本場フランスを当たってみることにしました。狙いはチーズの“プロ中のプロ”、「熟成士」というチーズの職人さんが熟成する極上チーズです!

どうせなら、スペシャリストの中のスペシャリストを!
この「チーズ熟成士」という職業、日本では馴染みのないものですので、簡単にご説明いたします。彼らはまず、農家やメーカーからチーズを買い付けてきます。このチーズ、もちろんそのまま食べても十分においしいのですが、これをさらに熟成させて、味そのものをより上質なものへと変えてしまう、まるで“魔法使い”のような職業です。

ウォッシュタイプのチーズであれば、さらにアルコールを吹きかけて熟成を進めてみたり、白カビであれば、温度・湿度を厳密にコントロールして熟成を最良の状態にコントロールしたりと、その全てがまさに職人技ですね。

彼らは、チーズを指で押して、その指の感触だけでチーズの熟成具合を確認します。チーズの端から真ん中までまんべんなくチェックし、手触りと香りなど、五感をフルに使いながらそのコンディションを確かめるのです。その姿は、静かにチーズと対話しているようで、ある意味“芸術的”ともいえるでしょう。

フランスには、このチーズ熟成士という職業に就いている方が多数おり、熟成士たちが腕を競うコンクールというものも、数年に1度ずつ開催されています。
そして、このコンクールを勝ち残った者のみに与えられるのが、職人にとって最高の栄誉である「M.O.F(MEILLEUR OUVRIER DE FRANCE)」=「フランス最優秀職人」の称号です!

受賞者は社会的に高い評価をうけ、フランス文化の担い手として大きな尊敬を集めるのです。日本で言えば「人間国宝」のようなものだと思えば分かりやすいかもしれませんね。

当店が「熟成士」のチーズを取り扱うのであれば、やはり最高の職人さんが手がけた最高の熟成チーズが理想ですよね。そうです、モチロン目標とするのは「フランス最優秀職人」が熟成させた、世界最高峰のチーズです!

この目標を達成するため、実は半年ほどその環境作りを行っていました。まさにジャストの熟成状態で皆さまのところにお届けできなければ意味がありませんし、MOF職人のチーズを扱うためには、通常の配送ルートでは許可されないのです。

フランスから成田空港、そしてお客さま宅まで、通常とは全く別の特別な発送経路を開拓し、厳密な温度管理の下で、最速でチーズを輸送できるルートを作ったのです!

ここまで完璧に準備を整えて、いざフランスへ交渉に向かいます!!

フランス最高峰の天才熟成士「ロドルフ・ムニエ氏」
交渉のターゲットとして的を絞った相手は「ロドルフ・ムニエ氏」です。

彼は、2007年1月にフランスに開催された、欧州を中心とした12カ国のチーズ専門業者が集まり、その技能を競う「カゼウス・アワード(国際フロマジュリーコンクール)」で優勝した人物です! 2007年のMOFコンクールの頂点に立った、名実ともにトップクラスの天才熟成士なのです。

彼が住む「トゥーレーヌ」という街は、パリからTGVで約1時間。“古城の街”というのに相応しい、歴史と自然の街でした。

このTGVとは、フランスの新幹線みたいなものですから、トゥーレーヌの駅前とかもっと賑わっているのかと思いきや、ものすごい田舎町で驚きました。
正直、「TGV、こんなところに停車するの?」って思ったぐらいです(笑)。ここからタクシーで30分。ようやく彼の熟成工房へ到着しました。

実は大の鉄道好き。TGVに乗れる時はいつもワクワクしてます(笑)

こう見ると、駅のホームはフランスも日本も同じですね

宿泊したホテルからの眺め。のどか過ぎて、携帯電話も圏外です…
まずは、彼の仕事場である「熟成室」を拝見しました。シェーブル・白カビ・ウォッシュ・青カビ・ハードと、それぞれのタイプごとに適切な温度・湿度の管理ができるよう、熟成庫が分けて作られています。

熟成の哲学について、チーズを片手に熱く語るロドルフ

さらに、熟成前のチーズたちを寝かせ、適度に乾燥させるための部屋まであって、徹底した管理が行われていることに驚かされました。

最初にシェーブルの熟成庫に案内されたのですが、足を踏み入れた途端、熟成庫独特の強烈な香りが鼻につきます。しかし、それよりも何よりも、シェーブルチーズの種類の多さに圧倒されます!さすが、本場フランスですね。
その中でも、このトゥーレーヌという土地は“シェーブルチーズの一大産地”として知られているところですので、日本では見ることのできない数多くのチーズたちが、右にも左にもズラリと並んでいます。こんなに沢山のチーズと出 会えると、自然とテンションが上がっていきますね(笑)

続けて、白カビ、ウォッシュの各熟成庫に案内されましたが、こちらでも、静かに熟成を重ねている真っ白な「ブリ・ド・モー」の大群があったり、すでに表面が赤茶けるまで熟成された、とてもおいしそうな「モンドール」があった りと、もう目が釘付けです。そして、それら一つ一つのチーズを手にとりながら、その熟成期間や熟成後の味わいについて熱く語るロドルフ氏の話に耳を傾け、チーズに対する彼の情熱がヒシヒシと伝わってきました。

彼がフランス最高の熟成士ロドルフ・ムニエ氏

これはシェーブルの熟成庫。その種類の多さに感動!

最高の状態に熟成されたチーズたち。当店で順次販売します!
そして、最後に入ったのは、少し離れた場所にあるハードタイプの熟成庫。他の熟成庫の2倍くらいの広さの中に、木の棚がズラリ。その上には堂々と原型のままのチーズが並べられています。その光景は、圧巻の一言! 「コンテ」に「パルミジャーノ」「カンタル」と、何年も静かに熟成され、最高の逸品に成長しているチーズたちに囲まれると、神聖な雰囲気すら感じてしまいます。

中でも、「これは自分自身のために何年も熟成させているんだ」というパルミジャーノがあったのですが、すでに表皮の刻印も薄くなり、色が深い茶色に変わりつつある、世界に2つとない素晴らしい逸品でした。 どれだけの旨味を凝縮しているのか想像がつかないほどで、「羨ましい!」の一言でしたね。

数多くのタイプの違うチーズを、おいしさのピークの状態にまで昇華させる職人技は、それぞれのチーズの特性を深く理解し、熟成による状態の変化を、知識と経験によって知り尽くしているプロだからできることでしょう。 彼の話を聞いていくにつれて、改めてその力量に驚かされました。

ちなみに、彼の趣味は「ピアノを弾くこと」だそうです。「ピアノが奏でる繊細なメロディーが、熟成の繊細な変化を感受するのに役立つんだ」と語っていました。 このセリフなんて、まさに芸術家の領域ですよね。どんな変化も見逃さないプロの熟成士、さすがですね。

世界の頂点に輝いたロドルフ氏本人から、事細かにチーズに対する思いを聞き、時間を忘れるほどじっくりと熟成庫を見学させてもらう、 こんな経験をした日本人はそうそういないと思います!!私の人生においても、実に刺激的で貴重な体験になりました。

各チーズへの思いについて熱く語るロドルフ

熟成中の「30ヶ月コンテ」。今すぐ食べてみたくなりますね!

世界に2つとない、ロドルフ特製の「超長熟パルミジャーノ」!

私の使命は“このチーズの存在を日本でも知ってもらうこと”だ!
熟成室の見学を終了した後は、ロドルフ氏が自ら切り分けてくれたチーズを試食。正直なところ、その味の完成度の高さは感動モノでした! 何と言えばいいのでしょうか、思わず“目を閉じたくなる味”なんですよ。

口に含んで舌の上で感じると、熟成されたチーズならではの高貴な香りが広がります。そして、食べ終わった後には、長い時間その余韻が残るのです。 この余韻を感じている間、思わず「あぁ、何ておいしいんだろう!」と目を閉じてしまうのです。

まさにマジックですね。目を閉じると、草原に放牧されている牛の姿、そのミルクを絞っている農場の作業者、そしてチーズ作りに精を出す職人、 そしてその周りの風土や気候。そんな光景の全てが頭に浮かんで走馬灯のように巡りはじめるような、とても想像力をかきたてられる衝撃的な味わいなんです。

試食を続けている間、「私は、この人が作るチーズを、日本の大切なお客さまに必ずお届けしよう。この味なら絶対ご満足いただけるし、 このチーズを食べることで本物のチーズの素晴らしさがご理解いただける」そんなことをずっと考えていました。

世界の頂点に立つMOF熟成士の熟成した、世界最高水準のチーズには、それだけのパワーがあるんです。 「これを日本のチーズファンに届けたい」「こんなチーズもあるんだということを、日本の皆さまに知っていただくことが私の使命なんだ」と、 本当に体が熱くなってきたぐらいですから(笑)

ここから先は、パソコンを取り出して、当店のホームページを見せて説明したり、私のチーズに対する思いを語ったり、 日本のチーズファンの現状を語ったり…と、私の出番だったのですが…。正直、かなり熱くなっていたので、ほとんど覚えていないんですよね(笑)

そして、チーズ熟成のスペシャリテ、ロドルフ・ムニエ氏との協議の結果、両者で緊密に連絡を取り合い、今後はロドルフ氏の熟成したチーズの 日本国内での販売を、当店と協力して拡大していくことで合意いたしました。


両者、笑顔で合意!

彼の愛するピアノとチーズ。芸術家肌の方です。

趣味のピアノも披露してくれました

四方店長お得意の「飲みにケーション(?)」は、国境を越えた!?







それでは、当店にお越しくださったロドルフ氏に、私たちスタッフから 様々な質問を投げかけておきましたので、その一部をご紹介させて いただきましょう。

質問に答えるロドルフ氏のまなざしは、真剣そのものでしたよ!

※ M.O.F.=Meilleur Ouvrier de France(国家最優秀職人章)。
料理や工芸・美術品などの各分野において、高度な技術を持ち、その道の継承者として相応しいとされる職人に授与されるフランスの国家的な称号のこと
“チーズに携わる者”としての人生を成功させたいと思ったからだね。

チーズ大国なんて言われるフランスであっても、熟成士と呼ばれる ほとんどの人は、ガラスのショーケースの前でチーズをカットして いるだけ…、なんてことも少なくないんだ。

チーズはもちろん大好きだけれど、だからってこの先何十年も チーズのカットだけを続ける人生を想像したら、ゾッとしたよ。

MOFを取得することで、チーズ界で活躍できる幅は確実に増えるし、 こうしてフランス国外のチーズファンの方にも、私の熟成した チーズに興味を持ってもらえるチャンスにも恵まれた。

今後は、チーズ熟成士の方に対して、熟成の技術を教えるセミナーの 開催などにも力を注いでいくつもりだよ。チーズ業界全体でチーズの レベルを底上げしていく…。MOFを戴いたからには、そうした 役割も担っていくべきだと自負しているんだ。

チーズの味わいや産地などの基本的な知識だけでなく、それぞれの チーズに関する歴史や、製造・熟成に影響を及ぼす菌や微生物に 至るまで、詳しく勉強する必要があるんだ。

もちろん知識があればいいというものでも無く、微妙な味わいの 変化や熟成具合を把握するために、テイスティング能力にも 長けていなければならない。ブラインドでの試食を重ねたりして、 その能力も高める努力もしたよ。

さらに、チーズを見栄えよく盛り付けるためのデコレーションの 技術(プラトー)も勉強したんだ。チーズは、味わいや香りだけでは なく、食感や目でも楽しんでもらわなきゃね。

オーダーチーズの皆さんもよくご存じだと思うんだけど、カットの 仕方一つでも味わいが変わってくるのがチーズの面白い部分だし、 チーズのおいしさを引き出して、よりいっそう魅力的に伝えるために、 ワインやフルーツなどとの組み合わせなども重要だ。

ベーカリーショップに勤めて、チーズとのベストマッチを 研究したこともあったよ。

それから、チーズのおいしさを“表現する”ためには、芸術的な 感性を磨くことも忘れちゃならない。僕の趣味でもあるピアノも、 チーズと決して無関係というわけでは無いんだ。

決して取得が容易ではないMOFだけれども、その後得られるものは かなり大きい。これについては、先ほど伝えたとおりさ。

もちろん、MOFという称号にあぐらをかいてはいられない。 職業柄、微生物関連の勉強は今でも欠かせないし、チーズは些細な 環境の変化でもどんどん変化するからね。

いつまで経っても飽きが来ない、とっても面白いものなんだよ。
…なるほど〜。ロドルフ氏の熱心な表情に、それに負けないくらいの 真剣さで聞き入るスタッフ一同。

特に、MOF取得のくだりなどは、身振り手振りを交えての熱弁を ふるってくださったので、私も通訳なしでもピンとくる部分が多く、 思わず「うんうん、それで?」と身を乗り出したほどでした!

この後、さらに当店のお客さまにも人気が高い「モンドール」と 「カマンベール」についてのこだわりも、改めて伺ってみました!

「モンドール」や「カマンベール」を気に入ってくださる方が多いと いうことで、本当に嬉しいよ。どうもありがとう。

味わいから“私らしい熟成の変化”を分かりやすく感じてもらえる チーズだと思うから、これを褒めてもらえるのは本当に嬉しいんだ。

これらのチーズは、ハードタイプのものとは違って、やわらかく 傷付きやすい、非常にデリケートなアイテムといえるね。そういった 意味で、その扱いには細心の注意を払っているよ。

あと、これは全てのチーズについていえることだけれど、まず もともとの“チーズの質”自体が良くなければ、いくら熟成しても おいしくはならないんだ。だから、素材となるチーズ選びには 本当に気を遣っている。

それは、単に“良いチーズ”と言われているものを買い付けるだけの 作業ではなく、例えば「その原料となるミルクは、どんなものを 食べている牛から絞られたのか?」というところまで、細かく チェックしているんだよ。

何故なら、牛が口にしている飼料の質は、ミルクの乳脂肪分や 味わいにも直接影響を与えるからね。季節や天候によっても、 微妙に変化するものだし、それがチーズの出来にも影響して、 ひいては熟成の仕上がり具合の調整にも関係してくる。

全く気が抜けないね。

それから、いざ熟成の段階に入った際には、特に温度や湿度の 変化には気を配っているよ。ここは、熟成士によって独自の こだわりや設定があるところだね。

もちろん、チーズによっても保管状況は変わってくる。チーズの タイプごとに熟成庫が分かれているのはもちろん、例えば、自分が 熟成するカマンベールが運搬される際、その時点から温度は9℃に 設定してある。これが、自分の熟成具合に適しているからなんだ。

当然、季節によって、チーズごとに熟成庫の湿温の調整してるよ。

さらに、工房に届いたチーズをいったん乾燥させて、その状態を 安定させてから熟成に取り掛かる。そんな“ひと手間”が、後々の チーズにの仕上がりに確実に効いてくるんだ。

余談だけど、モンドールやカマンベールよりも、もっと熟成が 難しいのは「シェーブルチーズ」だね。湿度の変化による影響も 著しいんだ。

例えば、雨が10日も降ってしまうと、湿度が上がりすぎてしまって 熟成が難しい。そういうときは湿度を最適に調整しながら熟成する ような微調整が不可欠だし、状態管理に気をつかう部分だね。
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